面会交流についての話し合い|決めるべきルールやその内容、協議の注意点など
離婚後、子どもと別居する親との交流をどのように維持するべきか、これは子どもの健全な成長に関わる重大な問題です。面会交流を親の権利と考えず、子どもが親から愛情を受ける権利として捉えるべきもので、その観点から具体的な実施方法も検討していく必要があります。
そのための話し合いにおいて知っておきたいこと、決めておくべきルールや注意点をまとめます。
面会交流の実施方法の決め方
面会交流のルールを決める方法には、主に次の3つの方法があります。それぞれの特徴や流れについて説明します。
当事者同士で話し合うのが基本
面会交流の詳細を定めるもっとも一般的な方法は「両親が離婚時に直接話し合って決める」というやり方です。
当事者が柔軟に決めていけるのがこの方法の利点です。
ただし、話し合いの場では離婚や別居に至った経緯からの感情的な対立をいったん脇に置き、子どもの視点に立って考えることが大事です。
そして内容については、親の都合だけでなく、子どもの学校生活や習い事のスケジュールなどにも配慮しましょう。
もし協議が成立したときは、「離婚協議書」や「面会交流に関する合意書」などの形で必ず文書化してください。
口約束で済ませておくとトラブルになりやすいためです。公正証書として作成しておけばより安心です。
面会交流調停での協議も可能
当事者間の話し合いが難航する場合は、家庭裁判所の調停手続きを利用しましょう。調停は公的な手続きでありながら話し合いによる解決を目指す制度であるため、対立関係のある親同士でも建設的な議論が進めやすいという利点を持ちます。
調停を利用する場合の流れは以下の通りです。
- 面会交流調停の申立書とその他添付書類を家庭裁判所に提出する
- 家庭裁判所からの連絡を待ち、第1回調停期日の日程を調整する
- 第1回調停期日では申立をした親と他方の親が交互に調停室へ入り、裁判官1人と調停委員2人の面前で面会交流についての意見を伝える
- 合意に至らなかった場合は第2回以降の調停期日へと続き、その後おおよそ1月に1回のペースで複数回実施される
調停では裁判官等が法的な観点から助言をくれ、双方の意見を調整してくれます。
そのため最終的に双方の合意が必要とはいえ多くのケースではこの調停で解決します。
面会交流審判で決定
調停でも合意ができなかった、不成立となる見込みが高いといったケースでは面会交流審判に移行します。
審判では、これまでの当事者の主張ややりとり、家庭裁判所調査官の調査報告書など、すべての事情を考慮したうえで裁判官が子どもにとって最善の結果を判定します。やはり重視されるのは子どもの利益であり、「実施すべきかどうか」「実施するならどのように行うべきか」、子どもの目線から判断されますので当事者間の話し合いや調停の段階からその視点を持っておくことが大事です。
面会交流について決めるべきルール
面会交流を円滑に実施するためには、曖昧な取り決めを避け、具体的で明確なルールを定めることが不可欠です。
以下に挙げる項目について検討し、合意形成を目指しましょう。
定めるべき項目 | ルールの決め方 |
---|---|
実施頻度 | 子どもの年齢や生活パターン、両親の仕事の都合なども踏まえて決定する。乳幼児の場合は短時間で頻繁に、学齢期の子どもは週末を中心に設定するなど。 「月2回」「隔週土曜日」といった具体的な表現を用いつつ、「月2回程度」などと含みを持たせておくと柔軟性な対応がしやすくなる。 |
1回あたりの時間 | 「土曜日の午前10時~午後5時まで」などと開始時刻と終了時刻を明確化しておくと子どもの受け渡しもスムーズ。 子どもの生活リズムを崩さないよう、食事時間や就寝時間を考慮した時間設定も大事。 |
実施場所 | 子どもが安心して過ごせる場所を選ぶ。非監護親の自宅、公園、商業施設などさまざまな選択肢があるが、子どもの年齢に合わせて危険のない場所を選ぶべき。 |
親同士の連絡方法 | 面会に関する連絡手段も明確にしておく。電話やメール、LINEなどのアプリ、両親が使いやすい方法を選ぶと良い。 また、緊急時の連絡先も含めて取り決めておくと安心。 |
子どもの引き渡し方 | 受け渡しの場所や方法を定める。 また、必要に応じて引き渡しの際の立会人の有無なども決めておく。顔を合わせることに抵抗がある場合は親族などの信頼できる第三者を介した受け渡しも要検討。 |
変更が必要な場合の対応 | 体調不良や急用などで予定変更が必要になることも今後起こり得る。その場合の手続きを定める。「○日前までに連絡する」「代替日を設定する」など。 |
費用負担 | 面会交流にかかる交通費や食事代、レジャー費用などをどちらが負担するのか定める。通常は面会する非監護親が負担するが、遠方の場合は交通費を分担することもある。 |
以上の内容は一般的な項目であり、実際の話し合いの場では各々の状況に合わせて検討していかなくてはなりません。法的な問題も絡むうえ、いったん決めてしまうと容易にルールを変更することはできないため、弁護士のサポートも受けながら定めていくことをおすすめします。
面会交流について話し合うときの注意点
面会交流について話し合うときは冷静に対応し、子どもの気持ちや生活環境などにも配慮します。
また、面会交流が制限される可能性があることも知っておきましょう。
子どもの気持ちも尊重する
そもそも面会交流は子どもの権利でもあるため、子どもの気持ちを確認することが大事です。
言葉で明確に意思表示できる年齢の子どもについては直接話を聞くことができますが、その際は誘導的な質問を避け、自然に子どもの本音を引き出すよう努めましょう。幼い子どもでも親の顔色をうかがって本音を言えないことがあります。
両親の板挟みになることをおそれ、それぞれの親の前で異なる態度を示すこともあるのです。
なお、15歳以上の子どもにおいては審判でも意見聴取が行われる運用になっていますし、年齢が大きくなるほど、より子ども自身の意見を反映した形で面会交流も実施するようにしましょう。
子どもの年齢や生活環境に合わせる
面会交流の内容は、子どもの成長段階に応じて柔軟に変更していく必要があります。
《 子どもの成長段階に合わせた面会交流の目安 》
- 乳幼児期(0~3歳):短時間で、比較的頻度高く面会が実施される傾向にある。この時期の子どもは長期間会わないと親子関係の構築が困難になるため。ただし長時間の面会は乳幼児にとって負担が大きいことに留意。
- 学童期(6~12歳):学校生活が中心となるため週末や長期休暇を利用した面会が現実的。習い事や友達との約束など、子ども自身の社会生活も考慮する。
- 思春期(13歳以上):子ども自身の意思が重要。友人関係や部活動、受験勉強など、子どもも多忙になるため面会の頻度や時間について子どもと直接相談することが大切。
子どもの成長に合わせて実施方法等を変えられるよう、あらかじめ変更方法や条件なども取り決めておきましょう。
面会交流が制限される場合を理解する
面会交流は原則として認められるべきものですが、子どもの福祉を害するおそれのある、次のようなケースに該当すると制限される可能性があります。
面会交流が制限され得るケース | |
---|---|
虐待のリスクがある | 過去に子どもへの身体的虐待、性的虐待、心理的虐待、ネグレクトなどがあった場合。 加害親の更生状況、子どもの恐怖心の有無などを踏まえ、慎重に判断しなければならない。虐待の程度によっては完全に面会を禁止することもある。 |
DVの影響がある | 配偶者へのDVがあった場合、直接的に子どもへの暴力がなくても、子どもは「面前DV」の被害者として心理的影響を受けている。加害親との面会により、精神的苦痛がフラッシュバックしたりトラウマが再燃したりする可能性があるため慎重な判断が必要。 |
連れ去りのリスクがある | 面会後に子どもを返さないおそれがある場合。 過去に無断で子どもを連れ去った経歴がある、海外への渡航歴があるなどの要因があるときは実施しない、あるいは監護親や第三者の立ち会いのもと実施することを検討する。 |
子どもが強く拒否している | 子どもが面会を明確に拒否している場合。 ただし、単なる一時的な感情で拒否しているのか、片親疎外の影響なのか、正当な理由に基づく拒否なのかを見極める必要がある。 |
薬物・アルコール依存がある | 薬物やアルコールの依存症がある場合。 子どもの安全面で懸念があるため、治療を受けて回復している場合でもまずは短時間・監視付きの面会から始め、段階的に通常の面会へ移行するなど慎重なアプローチを検討する。 |
明らかな問題があるなら判断もそれほど悩むことはないでしょう。しかしながら、線引きが難しいケースもありますし相手方との交渉で悩むこともあります。面会交流は長期的に実施していくものですし、決め方や話し合いに不安があるなら弁護士に相談することをおすすめします。
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榎本 清Kiyoshi Enomoto / 埼玉弁護士会
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