物損事故と人身事故の4つの違いを解説
交通事故を起こしてしまった・事故に遭ったとき、それが「物損事故」なのか「人身事故」なのかによってその後の対応が変わってきます。
これらの違いを正しく理解することは、万が一事故に遭ってしまった際に適切な対応をとるうえでとても大事なことです。
当記事では代表的な違いを4つピックアップしましたので、ぜひチェックしてください。
「人的被害」の有無が分かれ目
物損事故と人身事故の定義にあたる重要な部分ですが、これらを分けているのは「人的被害」の有無です。
「物損事故」とは、事故によって車・ガードレール・建物などの物に損害が生じているものの、運転者・同乗者・歩行者などに怪我がない場合を指します。一方の「人身事故」とは、事故によって人が怪我をしてしまったケース全般を指します。
事故で誰かがかすり傷を負った、むち打ちになった、骨折した、といった場合にはたとえそれが軽傷であっても人身事故として扱われます。
事故直後は自覚症状がなくても、後日病院で検査を受けた結果、怪我をしていることが判明し、人身事故に切り替わるケースも存在します。
違い①違反点数の加算
物損事故と人身事故には、運転者に対する行政処分の1つである「違反点数の加算」にも違いがあります。
物損事故の場合、通常は違反点数が加算されません。これは、物損事故が人身事故と比較して相対的に軽微な事故であると判断されるためですが、決して軽視されているわけではありませんので、特に悪質であったり被害が大きかったりすると点数が加算されることもあります。
一方、人身事故の場合は基本的に違反点数が加算されます。事故の状況や被害者の負傷の程度に応じて重く加算される仕組みになっており、飲酒運転により死亡事故を起こしたときなど特に悪質なケースだと免許停止や取り消し処分となる可能性も高くなります。
違い②刑事罰の適用
物損事故と人身事故では、「刑事罰の適用」についても大きな違いがあります。
物損事故の場合、刑事罰が適用されないことも多いです。
※ただし、意図的にぶつけたりしたときは器物損壊罪等が成立する。
一方、人身事故の場合は刑事罰が適用される可能性も十分に考えられます。
罰則の内容としては、罰金刑で済むこともあれば、懲役刑が科されることもあります。
違い③警察の対応
「事故発生時の警察の対応」も、物損事故と人身事故では異なります。
物損事故の場合、警察は主に当事者からの事故状況の聴取を行い、簡単な報告書を作成することが多いです。
物損事故は物的損害のみですので人身事故に比べて比較的軽微な事故と判断されやすいためです。
※ただし、後日怪我の症状が現れるなどして人身事故に切り替わる可能性もある。被害者側は改めて警察に届け出て、人身事故に切り替えてもらう必要がある。
一方、人身事故の場合、警察は現場に駆けつけて詳細な実況見分を行います。
事故現場の状況を写真や図面で記録したり、目撃者から証言を聴取したりするなど、より詳細な調査が行われる傾向にあります。
違い④損害賠償の内容・金額
物損事故と人身事故では、「損害賠償の内容と金額」も大きく異なります。
物損事故の場合、損害賠償の対象となるのは主に車両や物品の修理代、交換費用などの物的損害です。
例えば車の修理費、破損したガードレールの交換費用、事故によって壊れた積荷の弁償費用などが挙げられます。
一方、人身事故の場合は物的損害に加えて被害者の治療費・慰謝料・休業損害など多岐にわたります。
《 人身事故で発生する損害賠償請求の例 》
- 治療費(被害者が病院で治療を受けた場合の診察料や入院費用、通院費、薬代など)
- 慰謝料(事故によって被害者が受けた精神的な苦痛に対して支払われる賠償金。入院期間や通院期間、怪我の程度、後遺症の有無などを考慮して算出される)
- 休業損害(事故によって仕事を休まなければいけなくなった場合の収入減を補償するための賠償金)
- 逸失利益(事故によって後遺症が残った場合、労働能力が低下し、将来得られるはずだった収入が減少する可能性がある。この減少分を補償するための賠償金。)
物損事故でも精神的な苦痛が生じることはありますが、法的に認めてもらうのは簡単ではありません。
家族同然に暮らしてきたペットが死傷したなど特段の事情がない限り、物損事故で慰謝料は発生しないものと考えておきましょう。
なお、慰謝料の金額については治療費などとは違い具体的に数値で表すのが難しいです。そこで一定の算式を用いて評価するのが一般的です。
参考になるのは過去の裁判例で、そこでは①怪我の程度と②入院および通院の期間、が金額を大きく左右する要因と捉えられています。
なお、損害賠償請求を行う場合はまず示談交渉から始めるのが一般的ですが、その際の交渉や手続きについては弁護士に依頼することが推奨されます。示談に慣れている保険会社と交渉をしなければならないため、納得のいく結果を得ることが難しいのです。
不利な条件を受け入れてしまわないため、そして適切な賠償額を計算するためにも、交通事故に強い弁護士にご相談ください。
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