離婚協議書は公正証書にすべき! そのメリットや作成のタイミングについて
離婚の手続には裁判所を利用するタイプもありますが、基本的には夫婦間の協議で離婚を決定します。これは協議離婚と呼ばれ、その際には「離婚協議書」を作成するのが一般的です。
離婚協議書の作成方法は自由なのですが、厳格な手続を経て、公正証書として作成することができます。
当記事では公正証書にすべき理由や適切な作成時期などを紹介します。
そもそも離婚協議書の作成は必要か
まずは、離婚協議書について簡単に紹介しておきます。
離婚で必須なのは「離婚届」
離婚をする場合、「離婚届」を提出しなければなりません。協議離婚においては、①夫婦双方に離婚の意思があること、そして②離婚届を提出することが離婚の要件とされています。
つまり、離婚協議書の作成については法的に必須とはされていません。離婚届の提出さえできていれば、離婚協議書がなくても離婚自体は成立させられるのです。
離婚の条件をまとめたのが「離婚協議書」
前述の通り、離婚協議書はその存在自体が離婚の成立を左右するものではありません。離婚協議書は、「夫婦が話し合って決めた離婚の条件をまとめた文書」です。
例えば次のような事項を記載することになります。
- どちらを親権者として定めるのか
- 子どもの養育費はいくらか
- 子どもとの面会交流はどのように実施するか
- 財産分与の割合はいくらか
- 慰謝料としていくら支払うか
双方の合意があれば基本的に自由な内容で定めることはできますが、夫婦に子どもがいるとき、親権者については必ず定めなければなりません。また、慰謝料については常に発生するものではありません。離婚の原因につきどちらか一方に責められるべき事情があり、それが不法行為と評価されるような場合に認められます。不倫やDVなどがその一例となり得ます。
後日のトラブルを避けるためには離婚協議書が必要
離婚協議書には離婚に際して定める様々な条件が取りまとめられます。
しかしながら、書類としてその条件をまとめなければ効果が生じないわけでもありません。口頭でも約束は有効ですし、協議書として作成しなくても問題なく離婚後の生活を送れることはあります。
では、なぜ離婚協議書を作成するのでしょうか。
それは、後から「そんな約束はしていない」「その条件には合意していない」などと紛争を蒸し返されることを防ぐためです。争いが生じても、過去に交わした条件の証明ができれば問題ありません。
ただ、条件の内容を形に残しておかなければ証明をすることは困難です。協議の時点では揉めていなくても、協議書が作成されていないのをいいことに、協議をなかったことにしようと相手方が主張してくる危険もあります。
こうしたリスクを避けるために、離婚協議書は作成すべきなのです。
離婚協議書を公正証書にするメリット
適当な用紙を使い、好きなように記載して、離婚協議書を作成することも可能です。しかし「後日のトラブルを防ぐ」という目的を果たすためには、「離婚協議書を公正証書にしておく」ことが大事です。
公正証書とは何か
公正証書とは、公証人の作成する文書のことです。
離婚協議書に限らず、公証役場にて、公証人に依頼して公正証書を作成してもらうことができます。公証人は公務員であり、公務員がその職務として作成する文書は「公文書」としての性質を備えます。
取引金額の大きな契約を締結する場面、遺言書を作成する場面などで利用されることがあります。基本的には任意に作成を依頼するのですが、特に重大な権利義務について定める契約では、公正証書として作成することが法的な義務になっている例もあります。
公正証書にすることで証拠力が高まる
離婚協議書を夫婦間で作成したときは「私文書」として出来上がります。
しかし公正証書は公文書であり、公文書は私文書に比べて「文書の証拠力が高い」という特徴を持ちます。
例えば私文書としての離婚協議書を作成していたとしても、文書の有効性が争われるリスクが残ります。要は、「そんな文書は作成していない」という主張を許す余地が比較的大きくなってしまうのです。
一方の公正証書は、法律のプロである公証人がきちんとチェックし、適式な方法で作成されたことを確認してくれます。身分確認なども行います。そこで、文書が無効であることの主張を退けやすくできます。
文書の紛失や偽造のリスクがない
離婚協議書を夫婦間できちんと作成したとしても、その後紛失・滅失、さらには偽造などのリスクを完全に避けることは難しいです。
離婚条件を反故にしたいと考える相手方が、後から原本を奪ってしまう可能性もゼロではありません。上手く偽造されてしまうと、どちらの言い分が正しいのか、客観的に判断することも難しくなってしまいます。
この点、公正証書として作成していれば、原本が公証役場に保管されますので紛失や偽造などのリスクはありません。保管方法などに不安を抱く必要もなくなります。
差押えまでがスムーズになる
離婚協議書に金銭の支払いについて定めるケースも多いです。例えば慰謝料の支払い、養育費の支払い、財産分与についてなどの記載です。
有効な文書として認められる場合、支払いを求める権利が認められますが、相手方が素直に応じてくれないこともあります。そうすると実際にその金銭を回収するのは簡単なことではありません。
裁判所に申し立てて調停や訴訟などの手続を進めたり、相手方の財産情報を特定したり、手間も時間もかかってしまいます。その準備を進めている間に相手方が逃げ、財産を隠すなどして、約束通りの金銭を受け取れなくなる危険性も高まります。
しかし公正証書として離婚協議書を作成し、「強制執行認諾条項」を定めることで、迅速な差押えが可能となります。すぐに相手方の資産、給料などを押さえて、そこから約束通りの金銭を回収できるようになります。
公正証書は離婚届の提出前に作るべき
「離婚届の提出と公正証書(離婚協議書)の作成はどちらを行うべき?」という疑問に対しては、「離婚届提出前に、公正証書を作成すべき」がアンサーとなります。
いったん離婚を成立させてしまうと、離婚条件が付されることで不利な立場に立たされる側が雲隠れしてしまうリスクがあります。また、離婚前であれば離婚に向けた双方からの歩み寄りが期待できますが、離婚成立後だと条件を付けるのが難しくなってしまいます。
「早く離婚してしまいたい」とはやる気持ちも出てくるかもしれませんが、条件について話し合うために再度協議を行うのは精神的にも大きな負担となってしまいます。
そこで離婚を正式に成立させる前に、きちんと条件を話し合い、その内容を公正証書としてまとめておくことが望ましいといえます。
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