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相続財産の調査|基本的な流れと財産別の調べ方・費用について

遺産分割協議を進めるためには相続財産を把握しておく必要があります。また、相続開始を知ってから10ヶ月以内には相続税申告の期限もやってきますので、申告・納税の必要性を判断する上でもやはり調査を済ませておかなくてはなりません。

 

当記事では、この相続財産の調査に関する基本的な知識を紹介していきますが、調査には大変な手間がかかりますし調査漏れによりトラブルが起こるリスクもあります。そのためご自身で完遂する自信がないという方は弁護士のような専門家を頼ることも検討すると良いでしょう。

相続財産調査の基本的な流れ

相続財産の調査とは、亡くなった方(以降、「被相続人」と呼ぶ。)がどのような財産を持っていたのか、相続対象になる財産について詳しく調べていく作業のことを指します。

 

被相続人が生前保有していた財産は、基本的に相続人の手に渡ります。そして相続人が複数いるときはその全員で相続財産を分割することになるのですが、相続人の間で不平等が生じないようにバランスを考えて分割していくのが通常です。

そしてバランスよく分けていくには相続財産全体の内容が把握できていなければなりません。手あたり次第見つけた財産について「これは誰がもらう?」などと話していては効率も良くありません。

 

そこで遺産分割を行う前に相続財産の調査を進めていきましょう。

 

調査に必要な手がかりの多くは、被相続人が暮らしていた家の中にあります。まずは自宅の中を調べて財産に関わる資料がないか、確認していきましょう。

 

特にチェックしたいのは預金通帳です。預金通帳それ自体から読み取れるのは預貯金の残高ですが、そこに記された情報から、さまざまな財産関係が明らかになることがあります。他にも郵便物や納税通知書、契約書などさまざまな資料が調査に役立ちます。

 

自宅の捜索から手がかりを掴むことができれば、各機関に問い合わせるなどして、一つひとつの財産について価額なども明らかにしていきます。例えばある金融機関との取引を匂わす資料があったときは、その金融機関に問い合わせて残高がないかどうか、その金額はいくらなのかを調査していきます。

 

調査した財産は「財産目録」にまとめていきましょう。法令上のフォーマットなどは存在していませんので、相続財産一覧が見やすく整理されていれば問題ありません。財産の種別、詳細、評価額を表にして整理します。また、作成自体も義務ではありませんが、これを作っておけば遺産分割協議も円滑に進めやすくなります。

調査対象になる相続財産

被相続人の財産は広く相続の対象となりますので、調査対象も広範囲に及びます。例えば次のような財産については調査を行う必要があります。

 

  • 預貯金
  • 現金
  • 貸金などの金銭債権
  • 借地権
  • 株式
  • 投資信託
  • 土地や建物などの不動産
  • 自動車や貴金属などの動産
  • 借金などの債務

 

自宅にあるちょっとした家財なども相続対象ではありますが、大した価値が見込めない小物まで厳格な調査を進め、鑑定を行うまでの必要はありません。相続財産のうち価額ベースで多くを占めるのは不動産や預貯金ですので、まずはこれらをしっかりと調査しましょう。

 

一方で、マイナスの価値を持つ債務も相続対象になることを忘れてはいけません。大きな借金が残っているときはまるまる相続するのではなく、「相続放棄」や「限定承認」も検討する必要があります。

※相続放棄:一切の権利義務を相続しないこと

※限定承認:取得する積極財産の範囲に限定して、借金等の返済義務を負うこと

 

ただし、相続放棄や限定承認の手続は相続開始を知ってから3ヶ月以内に済ませないといけないため、できるだけその期限までに債務を調査しておきましょう。

調査時に準備しておきたい書類

調査にあたり、各機関に対して問い合わせや残高証明書の請求を行うことがあります。そのとき、ご自身が相続人であることを示す資料や、被相続人に関する資料が必要になります。

 

詳細は問い合わせ先により異なりますが、多くの場合、次の書類が求められますので事前に用意しておくと良いです。

 

  • 被相続人の住民票の除票
  • 被相続人の戸籍謄本・除籍謄本
  • 相続人の戸籍謄本
  • 相続人の印鑑証明書
  • 相続人の身分証明書

財産別の調査方法

被相続人の持っていた財産の種類や量が多いほど調査の作業量は増えますが、ここでは例として次の4つについて調査方法や費用を紹介していきます。

 

  1. 預貯金
  2. 不動産
  3. 動産(貴金属や自動車など)
  4. 借金

預貯金

預貯金の調査では、まずは被相続人との取引があった金融機関の特定が必要です。

 

通帳やキャッシュカード、銀行等からの郵便物などが見つかれば、取引があった可能性が高いです。そこで金融機関の特定後は、残高証明書の発行請求を行います。

費用の相場は1,000円程度。請求は窓口でも郵送でも可能なケースが多いです。

 

残高証明書の発行については相続人の1人が手続を行うだけでも対応してくれることが多いですが、通常、相続人であることが証明できる戸籍謄本は提出しないといけません。

 

また、口座の確認ができれば通帳の記帳も行い、直近までの取引履歴も把握できるようにすると別の財産の調査にも役立ちます。

 

なお、通帳を発行していない口座の存在や通帳を紛失した可能性も考慮し、近所の銀行や取引が疑われる銀行についても調査対象に含めると良いでしょう。

不動産

不動産を持っている場合は固定資産税の納付書が被相続人の自宅に届いていると思われます。この納付書とともに固定資産税課税明細書が送られてきますので、被相続人宛の納付書がある場合はそこから不動産の所有状況も調べられます。他にも、権利証や登記情報通知書などが不動産調査にあたっての重要な資料となります。

 

これらの書類が見つからない場合は、市役所等で「名寄帳」の発行請求を行いましょう。費用は自治体により異なりますが、費用が発生する場合でも数百円程度です。名寄帳からは市区町村内の不動産を網羅的に調査できますが、エリア外の分については対象外であることに注意しましょう。

動産(貴金属や自動車など)

動産とは、不動産以外の物のことです。相続財産の調査で特にチェックしておきたいのは、金銭的価値が比較的大きい貴金属や自動車、美術品などです。

これらは基本的に自宅を調べることで見つけられますが、銀行などの貸金庫に保管されている可能性もあります。

 

その他価値のありそうなものは業者に鑑定の依頼を出すなどして価額も調べておきましょう。

借金

借金の存在は口座の履歴から確認することができますし、貸金業者と交わした契約書、送付された書類などからも存在を疑うことができます。

あるいは信用情報機関に対して開示請求を行い、取引情報をチェックすることも可能です。

 

例えば銀行から借り入れをしている場合は「全銀協(一般社団法人全国銀行協会)」、消費者金融との取引であれば「JICC(株式会社日本信用情報機構)」、クレジットカード会社との取引であれば「CIC(株式会社シー・アイ・シー)」に対して開示請求を行います。

 

各機関により開示請求にかかる費用は異なりますが、1つの請求に対して必要になるのは、おおむね500円~1,000円超です。

 

なお、これらの機関への請求ですべての借金が明らかになるとは限りませんので要注意です。

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榎本 清Kiyoshi Enomoto / 埼玉弁護士会

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