相続で家族が争わないためにすべきこと~よくあるトラブルと対策について~
相続で、家族間に深刻なトラブルが発生するケースが後を絶ちません。
しかし、被相続人の死後に発生する相続トラブルは事前の準備とその後の対策で防ぐことが可能です。
具体的に何をすればいいのか、よくあるトラブルを取り上げて対策について解説していきます。
相続でよくある相続トラブルの例
相続トラブルは遺産分割の方法や評価額の解釈の違いから生じることが多く、特に不動産や事業承継が絡むケースではその傾向が顕著です。
また、被相続人の生前の介護や看取りに関する貢献度の評価をめぐって争いが生じることも少なくありません。
相続人同士が長期間にわたって話し合いを行っても解決せず、最終的に調停や裁判に発展するケースもあります。
頻繁とはいえないものの、遺産分割調停の申立件数は毎年1万件を超えており決して他人事として考えるべきではありません。
揉める要因とは
相続トラブルが発生する主な要因として以下のような例が挙げられます。
- 遺産分割方法に関しての被相続人の意思が不明瞭
→ 被相続人の意思が明確に残されていない場合、相続人それぞれの解釈や期待が異なることで対立が生じる。特に、家族の誰かが単独で相続すべき特別な理由がある財産(先祖代々の土地や家業など)について、明確な取り決めがないケースだと問題が顕在化しやすい。 - 相続財産の評価額をめぐる対立
→ 不動産や株式などの評価額について、相続人間で意見が分かれることがある。とりわけ将来の値上がりが期待できる不動産や事業用資産の評価は争点となりやすい。 - 生前の介護負担に対する評価
→ 親の介護を担った相続人が、その貢献度に見合った相続分を主張するケースがある。寄与分の算定が難しいことから、相続人間で意見の対立が起こりやすい。 - 相続以前からの対立関係
→ 相続以前から家族間に確執があるケースだと、話し合いで容易に解決できるはずの問題でもこじれてしまうことがある。相続人が多い場合はより複雑化しやすい。
相続トラブルを防ぐための事前準備
相続トラブルを未然に防ぐうえで重要なのは「被相続人自身が計画的に準備を進めておくこと」です。
具体的には、家族間で十分なコミュニケーションを取っておくこと、相続人が相続に対してどのような認識を持っているのかを確認すること、そして専門家にも相談することが有効です。
早めに話し合う
相続について生前から話し合うのは心理的なハードルが高いものですが、被相続人の意思を明確にし、相続人同士の認識を擦り合わせるために重要な取り組みです。
話し合いの場では以下のポイントを意識しましょう。
- 相続財産の全体像を共有しておく
- 不動産の活用方法について意見を出し合う
- 介護が必要になった場合の役割分担を検討する
- (被相続人が事業者である場合)将来の事業承継の方針を確認する
話し合いを通じてルールを作ったときは、その内容を文書として残すことも大事です。
口頭の合意で済ませると後々余計な揉め事を生む要因となりかねません。
相続人の希望を確認しておく
各相続人が相続財産についてどのような希望を持っているかを具体的に確認することも重要です。
この段階で把握しておくべき内容として、以下のようなものが挙げられます。
- 特定の不動産への居住・使用の希望
- 現金や預貯金の必要性
- 相続税の納税資金の準備状況
- (事業用の物件がある場合)事業承継への意欲の有無
希望を確認する際は、一方的な聞き取りではなく、相続人同士が互いの状況や考えを理解し合える場を設けることが望ましいでしょう。
遺言書の作成
遺言書を作成しておくことで、被相続人の希望を相続開始後の相続人に伝えることができます。
また、法律に従い適式に作成できていれば遺言内容に法的な拘束力を持たせることができますので、記載した通りに遺産分割をしてもらうことができます。
そのため「相続人の話し合いにすべて委ねたのでは揉める可能性が高い」と思われるときはあらかじめ遺言書を作成して遺産分割協議の負担を減らしておくことが望ましいです。以下のポイントを踏まえて作成作業に取り掛かりましょう。
- 相続財産の配分方法を具体的・明確に記載すること
- 特定の財産を特定の相続人に相続させるときはその理由や背景も記すこと
- 遺言執行者を指定してスムーズな遺言の執行を図ること
生前贈与の活用
生前贈与には「相続税の負担を軽減する効果」と「円滑な資産承継を実現する効果」という2つの面で利点があります。
相続税の負担軽減を目的とするときは以下の仕組みを意識すると良いです。
- 年間110万円までは基礎控除を活用して非課税で贈与できる(相続時精算課税の場合も同様)
- 教育資金の一括贈与の仕組みを使えば1,500万円まで非課税にできる
- 結婚・子育て資金の一括贈与の仕組みを使えば1,000万円まで非課税にできる
- 住宅取得等資金の贈与の仕組みを使えば最大1,000万円(一定の省エネ性能等を満たす住宅なら最大1,500万円)
特定の人物に渡したい特定の財産があるなら、生前贈与によって直接渡しておくことも検討します。これにより円滑な資産承継が実現できるでしょう。
ただし、過度な贈与税の負担がかからないよう税理士にも相談しながらやり方を工夫する必要があります。
加えて、生前贈与を実施する際は以下の点に注意してください。
- 贈与者自身の老後の生活資金も十分に確保しておくこと
- 受贈者の収入状況や将来設計を考慮すること
- 贈与税の申告漏れがないよう、契約書の作成など贈与の記録を残しておくこと
子どもや孫に対して早期の資産承継を考えているのなら、「相続時精算課税制度」の活用も検討すると良いでしょう。
贈与時点の税負担を回避しながら資産承継を進めることができます。
専門家への相談
相続対策を適切に進めるには専門家のサポートも重要です。
司法書士や税理士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家にもいろいろありますが、手続きからトラブル予防・解決に至るまで全般に対応できるのは弁護士です。相続問題に力を入れている弁護士を探して相談しておくとより安心して相続に備えることができるでしょう。
そのうえで、不動産登記に関する事務が発生するときには司法書士、相続税対策が必要な場合には税理士、不動産の評価が必要なときは不動産鑑定士も頼ると良いです。
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