相続人調査の手順を解説| 戸籍謄本の集め方や相続人判定のルールとは
亡くなった方の財産を誰が引き継ぐのか、どれだけ取得するのか、これらを確定するには相続人の調査をしなければなりません。被相続人の戸籍謄本等を集め、そこに記載されている情報と相続法のルールを照らし合わせて相続人の判定をしていくのです。
当記事ではこの調査の手順を解説しています。相続人の調査漏れは大きなトラブルを招くおそれがありますので、手順に沿って着実に進めるようにしましょう。
STEP1:被相続人の戸籍集め
相続人の調査にあたって最初に必要なのは「被相続人の戸籍情報」です。戸籍情報からその方の配偶者や子どものことなどが読み取れますので、戸籍集めは相続人調査の基本といえます。
そこで「被相続人の出生から死亡に至るまでの一連の戸籍謄本等すべて」を集めていきます。
死亡時の戸籍謄本等をまずは請求し、そこから遡っていく形で集めていくと良いでしょう。なお戸籍にも次のように種類があります。まだ戸籍に残っている家族等がいるのなら戸籍謄本を、被相続人が亡くなったことで全員が戸籍から抜けたのなら除籍謄本を取得します。一連の戸籍情報を集めていく中では、法改正の影響を受けて、改製原戸籍を集めることもあるでしょう。
- 「戸籍謄本」:現在戸籍にいる全員分を写した書面
- 「戸籍抄本」:現在戸籍にいる特定の者を写した書面
- 「除籍謄本」:除籍簿のすべてを写した書面
- 「除籍抄本」:除籍簿の一部を写した書面
- 「改製原戸籍」:戸籍の編製方法が変わる前の戸籍
※現在戸籍とは在籍中の者がいる戸籍、除籍簿とは結婚や死亡で、在席する者がいなくなった戸籍のこと。
戸籍謄本等の取得方法
戸籍謄本等を集めていくには、市区町村役場で交付請求を行わなければなりません。その際費用も発生します。
戸籍の請求方法 | |
---|---|
請求先 | 本籍地のある市区町村役場 ※2024年3月1日からはどこの窓口でも可。 |
請求できる方 | ・ 配偶者 ・ 父母や祖父母等(直系尊属) ・ 子どもや孫等(直系卑属) ・ 請求できる方から委任を受けた弁護士等 |
準備書類 | ・ パスポートやマイナンバーカード等の本人確認書類 ・ 代理人が請求する場合は委任状 |
手数料 | ・ 戸籍謄本は450円/通 ・ 除籍謄本と改製原戸籍は750円/通 |
法改正でどこでも取得できるように
戸籍法の改正が2019年に成立しており、戸籍の取得方法についての新ルールが2024年3月1日から施行されます。
戸籍証明書等の「広域交付制度」と呼ばれ、従来は本籍地の市区町村の窓口でしか取得請求ができなかったのですが、本籍地以外の窓口に対しても請求ができるようになります。
これまでは各市区町村で個別のシステムが構築されており、連携ができていなかったのです。そのため相続手続に取り組む方は本籍地の市区町村に対して個別に請求をしなければならず、これが相続人調査における大きな手間となっていました。
しかし、広域交付制度によって、最寄りの窓口に戸籍の請求をするだけで良くなります。非本籍地の役場が法務省を介して他の本籍地と連携し、戸籍情報を交付してくれます。
もし、本籍地が全国各地にある複数の戸籍を集めたいという場合でも、1ヶ所の市区町村の窓口でまとめて請求することが可能です。
STEP2:相続人の判定
戸籍謄本等に、相続人かどうかが明記されているわけではありません。そこで次に、戸籍情報を基に相続人の判定をしなくてはなりません。
相続人になれる人や遺産分割のことなど、相続に関するルールは民法という法律に規定されていますので、民法の内容と照らし合わせながら判定していきます。
相続人になれる条件
被相続人の配偶者は原則として相続人になれます。
※婚姻をしていない内縁の妻・夫は戸籍に載らず、相続人になることもできない。
しかしその他の人物については相続人としての順位が高い方から相続権を得ることができ、先順位の方がいるとき、後順位の方は相続権を得ることはできません。
各順位は次のように法定されています。
第1順位 | ・ 被相続人の子ども ・ 子どもを代襲相続した孫、再代襲相続したひ孫など |
---|---|
第2順位 | ・ 被相続人の父母や祖父母などの直系尊属 ※ 父母のいずれかが相続人になるとき、祖父母など上の世代は相続人になれない。 |
第3順位 | ・ 被相続人の兄弟姉妹 ・ 兄弟姉妹を代襲相続した甥や姪 ※ 甥や姪に対する再代襲相続は起こらない。 |
被相続人の兄弟姉妹が相続人になると思われるケースにおいては、被相続人の戸籍謄本等を集めるだけでなく、第1順位の方や第2順位の方が亡くなったことを示すために先順位の方の戸籍謄本等もさらに集めなくてはなりません。
相続人ではなくなるケース
身分上、被相続人の配偶者や子どもであっても、相続人ではなくなるケースがあります。
次のいずれかに該当するケースです。
- 相続放棄をしたとき
- 相続人になれるはずであった方が自ら家庭裁判所に申し出て、相続人ではなかったことにできる。資産より大きな借金が残っている場合などで行われることが多い。
- 相続放棄をした方に関しては代襲相続も発生しない。
- 相続廃除をされたとき
- 被相続人は、生前の申し立てや遺言書を使って特定の人物の相続権を剥奪することができる。
- 廃除が認められるのは、家庭内暴力やハラスメント、勝手な散財、その他迷惑行為等を受けていたとき。
- 相続欠格になったとき
- 被相続人や先順位の方を死なせた、遺言書を偽造したなど特に悪質な事由があるとき、法律上のルールによりその行為者は相続権を失う。
相続人調査や相続手続は弁護士にご相談ください
相続人を調査するための戸籍を集めだけでも手間がかかりますし、そこからさらに身分関係の読み取り、相続人の判定をしなければなりません。
間違いのないよう、確実に「誰が相続人か」を判断してその後の手続を進めていかないとさまざまな問題を引き起こしてしまいます。例えば遺産分割協議には相続人全員の合意が必要です。参加すべき者が漏れてしまっていたときは再び協議をしないといけませんし、附随する各種手続もやり直さないといけなくなります。
そこで相続に伴うリスクを少しでも抑えるため、弁護士を頼りましょう。戸籍集めの作業や相続人の判定なども弁護士に任せられます。遺産相続をめぐって揉め事が起こりそうな場合でも弁護士がついていれば解決しやすくなりますし、その他の手続で疑問が出たときでも解決しやすくなります。
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