調停調書について|作成までの流れや届くタイミング、保管期間など
離婚調停に代表される「調停」は、裁判所の手続の中でも比較的簡易な手続です。そこで訴訟を提起する前に調停を行うというケースも少なくありません。そして調停でトラブルを解決したときは「調停調書」と呼ばれるものが作成されるのですが、これは調停の結果を証明するうえで重要な資料として機能します。
当記事ではこの調停調書について解説していきます。どのような手続を経て作成されるのか、いつ届くのか、保管をする必要があるのかを説明していますので参考にしてください。
調停の概要
調停とは、揉めている当事者間に裁判所が入り、話を聴き、和解を目指すための公的手続です。訴訟ほど厳格な手続ではないこと、和解を目標としている点などが特徴とされています。そこで日常生活のトラブルに対して、当事者だけだとなかなか解決できない場面でよく利用されています。
なお、調停にも次のように種類があります。
- お金の貸し借りをめぐるトラブルなど、民事上のトラブルを解決するため簡易裁判所で手続を行う「民事調停」
- 離婚問題や親権獲得の問題など家庭のトラブルを解決するため家庭裁判所で手続を行う「家事調停」
訴訟と比較したときの違い
訴訟と調停には次の違いがあります。
- 納得感が得られる
話合いを行い合意により終結するため、最終的に当事者は納得感が得られる。 - 手続が簡単
法律の知識がなくても1人で手続が進めやすい。 - 費用が安い
手数料が1,000円ほどであるなど、訴訟に比べて低額。 - 秘密が守られる
訴訟のように公開の法廷で審理を行わない。非公開の部屋で話し合われるため第三者に揉め事が知られることがない。
これらは主に調停のメリットです。一方で、話し合いで和解を目指すことが困難なケースだと問題を解決できないというデメリットもあります。そのような場合は最終的に訴訟手続を行う必要があります。
調停の申立てから調停調書作成までの流れ
調停調書は、調停が成立した場合に作成されるものです。流れとしては次のように整理できます。
手続の順序 | 詳細 | |
---|---|---|
① | 裁判所への申立て | 当事者が申立書を作成し、裁判所に提出する。 |
② | 調停期日の指定 | 裁判所が調停期日(当事者双方から事情を聴くための期日)を指定し、通知がくる。 |
③ | 調停期日での調整 | 調停委員会(裁判官と調停委員から構成される)が当事者双方から話を聴く。調停委員会は、中立公平な立場から解決策を提案しながら和解をサポートする。 |
④ | 調停の終了 | 【調停成立の場合】 話し合いがまとまれば、合意した内容をまとめた調停調書が作成される。 ※離婚調停の場合はその後調停調書の謄本を市区町村役場に提出して離婚の届出をしないといけない。 |
【調停不成立の場合】 話し合いがまとまらない場合、調停は終了となり調停調書も作成されない。その後審判手続に移行することもあれば、訴訟を提起することもある。 |
調停調書について
調停が成立したとき、書記官が調停成立の事実と合意に至った調停条項を、調停調書にまとめて記載していきます。この調停調書は単に合意内容を記録した文書ではなく、法的に重要な意味を持つものです。
調書の特徴や効力
調停は訴訟よりも簡易な手続ですが、いったん合意して決まった事柄が調書に記載されると、判決を受けたときと同じ強制力が与えられます。代表的な効力として「強制執行がスムーズに進められる」という点が挙げられ、もし約束通りに義務を履行しないときはすぐに相手方の財産を差し押さえることが可能となります。
そのため私文書として作成する契約書よりも一段強い効力を持つといえるのです。
調停調書と同じく公文書にあたる「公正証書」もありますが、こちらの場合は強制執行を認める文言(執行認諾文言)を記載しなければ同様の効果を得ることができません。特に重要な契約書などを公正証書として作成することがありますが、調停調書とは異なる作成手順を踏まなければなりませんし、強制執行の範囲(金銭の支払い以外への対応)にも違いがあります。
調書はいつ届くのか
調停が成立すると、当事者が別途求めなくても裁判所のほうで調停調書を作成してくれます。
ただし、その原本は裁判所で保管されますので、調書の謄本等を手に入れるには当事者が自ら申請しないといけません。申請せずに待ち続けても手元には届きませんので注意しましょう。
手続は調停が成立した場で進めることが可能で、謄本の発行を申請しておけば後日手元に届きます。申請時点で調書が作成されていないため、届くタイミングは申請から数日後となります。郵送の場合だと1週間ほどは見ておいた方が良いでしょう。
調書の保管期間
調停調書には「原本」や「正本」、「謄本」や「抄本」があります。原本は裁判所で保管される、押印もなされているオリジナルの書面です。正本は原本と同じ効力を持つ書面で強制執行を行う際などに必要となります。
一方、謄本や抄本は原本の内容を写した書面のことです。謄本は原本をまるまるコピーしたもの、抄本は一部をコピーしたもので、原本の存在および内容を証明するために使用します。
謄本等については裁判所に申請をすれば受け取ることができますので、原本が保管されている間は、最悪紛失しても再度入手することができます。例えば家事調停なら法令で30年間保管することが定められていますので、謄本の保管に関してそれほど厳格に考える必要はないでしょう。
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