面会交流を拒否された場合に非監護親ができることとは
面会交流は、離婚や別居後も子どもと非監護親との関係を保ち、子どもの健全な成長のために重要な権利です。
しかし、監護親が面会交流を拒否するケースも少なくありません。
このような状況に直面した場合、非監護親はどうすべきか。ここでいくつかの選択肢とポイントを解説します。
方法①監護親との直接的な話し合い
面会交流を拒否された場合、最初に試みるべき方法は「監護親との直接的な話し合い」です。
ただしこの段階では、冷静さと相手の立場を理解する姿勢が重要となります。
そこでまず、面会交流が拒否された理由を丁寧に聞き出すことから始めましょう。
監護親の懸念や不安を理解することで、問題の本質が見えてくるかもしれません。
例えば、子どもの安全や生活リズムの乱れを心配しているかもしれませんし、過去の経緯から不信感を抱いているのかもしれません。
また、話し合いの際は感情的にならず、子どものことを安全・安心を最優先に考えることが大切です。
そのうえで非監護親の立場からも面会交流の重要性や子どもとの関係維持の必要性を説明し、理解を求めましょう。
そして、単に「面会交流をさせてほしい」と主張するだけでなく、相手方の不安を払しょくするような具体的な解決策を提案することが大事です。
例えば以下のような提案です。
- 面会交流の頻度や時間を少なくする
- 第三者の立ち会いのもとで面会交流を行う
- 面会交流の場所をより安心できるところに設定する
- 面会交流前後の連絡方法を明確にする など
専門家(カウンセラーや弁護士など)の助言を求めることも検討しましょう。
第三者の客観的な意見が対話を促進し、建設的な解決策を見出すきっかけとなる可能性もあるためです。
方法②面会交流調停の申立て
監護親との直接的な話し合いで合意に至らない場合、次の段階として「家庭裁判所での調停」を検討します。
調停とは、裁判所が中立的な立場から両親の話し合いを仲介する制度です。基本的に以下のような流れで手続きが進行します。
- 調停期日の設定
- 調停委員を交えた話し合い
- 合意形成
- 調停の成立・不成立
調停の大きな特徴は、調停委員が両親の主張を聞き、互いの立場を理解し合えるよう支援するという点にあります。最終的には両者の合意がなければ解決できないのですが、当事者間だけで話すより、専門知識もある第三者が適切な距離感で関与することでより和解を成立させやすくなるのです。
調停のメリット | 調停のデメリット |
---|---|
第三者が間に入ることで冷静に話し合える。 | 平日の日中に家庭裁判所に行く必要がある。 |
専門家の助言を得ながら解決策を探れる。 | 調停が成立するまでに数ヶ月かかる場合がある。 |
合意内容が調停調書として法的効力を持つ。 | 弁護士に依頼する場合、費用がかかる。 |
不成立の場合でも審判手続き(後述)に移行できる。 | 相手が非協力的だと成立しない。 |
調停で合意に至らない場合は「審判」の手続きに移行します。
審判では、それまでに話し合われた内容・情報をもとに、裁判官が面会交流の可否や具体的な内容を判断します。結果に納得いかなければ高等裁判所に不服申し立てをすることも可能ですが、より高度な対応が求められるためそれまでに納得のいく結論を出せるよう努めましょう。
方法③履行勧告の申立て
調停や審判で面会交流が認められたにもかかわらず監護親がそれを守っていないときは、「履行勧告」の申立てを行うことも検討してみましょう。
履行勧告とは、家庭裁判所が当事者に対して取り決めを守るよう促す制度をいいます。「面会交流の取り決めがあるにもかかわらず、監護親が応じない」「面会交流の日程や方法が一方的に変更される」「取り決めた内容と異なる条件で面会交流が行われる」などの事情があって困っているときに活用すると良いでしょう。
手続きはおおむね次のように進行します。
- 家庭裁判所に履行勧告の申立てを行う
- 裁判所が監護親に対して事情聴取を行う
- 裁判所が監護親に面会交流の実施を促す
- (必要に応じて)家庭裁判所調査官による調査が行われる
裁判所から促してもらうことで、監護親に面会交流の重要性を再認識させることができますし、よほどの対立関係になければその後約束通りに実行してもらえる可能性が高いです。
ただし、履行勧告には法的強制力がありません。
そのため監護親が勧告に従わなくても面会交流を強制させることはできず、罰則を適用することなどもできません。
方法④間接強制の申立て
履行勧告で効果が得られない場合、次の段階として「間接強制」の申立てを検討します。
間接強制とは、面会交流などの一定の義務の履行を拒否した場合に金銭の支払いを命じ、そのペナルティによる間接的な義務の履行を促す制度のことです。
「面会交流の取り決めが具体的に定められていること」や「取り決めに強制執行認諾文言が付されていること」などの条件が求められますが、調停や審判によって和解がいったん成立しているのならこの条件を満たしているものと考えられます。
金額は個々の事案によって異なりますが、一般的には「数万円~数十万円程度」が相場とされています。
履行勧告と比較した特徴は、次のようにまとめることができます。
特徴 | 間接強制 | 履行勧告 |
---|---|---|
メリット | 法的強制力がある。 | 比較的簡易な手続きで申立可能 |
金銭的プレッシャーがあることで実効性が高い。 | 当事者間の過度な関係悪化を抑えやすい。 | |
デメリット | 申立ての要件が比較的厳しい。 | 法的強制力がない。 |
親同士の関係をさらに悪化させる可能性がある。 | 監護親が応じない場合の効果が限定的で問題解決に至らない場合がある。 |
方法⑤損害賠償請求(慰謝料の請求)
面会交流が不当に拒否され、精神的苦痛を被ったと法的に評価できる場合は、損害賠償請求を行うことも可能です。
この場合の損害は精神的な苦痛ですので、慰謝料の請求として損害賠償請求を行います。
この請求を実現するためには、以下の条件を満たすことが求められます。
- 面会交流の具体的な取り決めが存在している
- 監護親による不当な拒否があった
- 非監護親に精神的苦痛が生じている
- 拒否と精神的苦痛の間に因果関係が認められる
ただし、この方法は面会交流の直接的な実現につながるものではなく、あくまでも被った損害の補償を求めるものです。
金銭の請求で納得できないのなら別の手段を検討する必要があるでしょう。
弁護士への相談で早期解決
面会交流を拒否された場合は、状況に応じて適切な対応を選択することが大事です。
しかし、法的手続きは複雑で専門的な知識が必要となるため、1人で対応するのではなく弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士は、法的な観点からの適切なアドバイスをできますし、個々の状況に応じた具体的な対応策の提案もでき、早期解決に向けたサポートを行うことができます。また、交渉や法的手続きの代行などにも対応できるため、依頼主の時間的精神的負担を大きく軽減することができます。
面会交流が拒否されており、今後の対応について不安を感じている、適切な対応について悩んでいるという方は、ぜひ弁護士にご相談ください。
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