交通事故による慰謝料の算出方法と金額の相場について
人身事故に遭った方は、身体的な痛み・精神的な苦痛を負うことになります。
この損害に対する補償は「慰謝料」として発生し、実際に多くの人身事故では慰謝料の支払いが発生しています。
しかし精神的な被害は被害者の主観にもよることから、一定の算定基準によって金額を計算するのが一般的になっています。
具体的にどのようにして計算を行うのか、相場としてはいくらくらいになるものなのか、慰謝料の金額について当記事で解説していきます。
交通事故慰謝料の基本的な仕組み
交通事故における慰謝料とは、「事故によって受けた精神的苦痛に対する金銭的な補償」を意味します。
物理的な治療費や休業損害とは異なり、目に見えない心の痛みを数値化したものといえるでしょう。
そして慰謝料は大きく分けて3種類に分類できます。
- 「傷害慰謝料」
・・・怪我の治療期間中に感じる痛みや不便さに対する補償 - 「後遺障害慰謝料」
・・・治療終了後も残る後遺症による将来にわたる精神的苦痛への補償 - 「死亡慰謝料」
・・・被害者が亡くなった場合の本人および遺族の精神的苦痛に対する補償
これらの慰謝料は、加害者側の保険会社から支払われるのが通常ですが、算定にあたっては複数の基準が存在するため、同じ事故でも計算方法によって金額に大きな差が生じることがあります。
3つの算定基準で計算する
慰謝料の算定方法としてよく知られている3つの基準があります。
交通事故における慰謝料の算定基準 | |
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自賠責基準 | ・すべての車に加入が義務付けられている自賠責保険からの補償において採用される、もっとも低水準の基準。 ・自賠責保険は最低限の補償を目的としており、傷害慰謝料だと1日あたり4,300円と定められている。 ・「治療期間」と「実通院日数の2倍」のうち少ない方に4,300円を乗じて計算する。 例)治療期間が100日で実際の通院日数が30日の場合、30日×2=60日となり、治療期間の100日より少ないため、60日×4,300円=258,000円が傷害慰謝料となる。 |
任意保険基準 | ・各保険会社が独自に設定している基準 ・自賠責基準よりも高額になる傾向にある ・内容は公開されていないが、一般的には自賠責基準の1.2~1.5倍程度の水準とされている |
弁護士基準 | ・過去の裁判例をもとにできあがった算定基準であり、「裁判基準」と呼ばれることもある ・「赤い本」として知られる「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」に掲載されている ・その他の算定基準と比べてもっとも高水準 ・治療期間に応じて段階的に金額が設定されており、自賠責基準と比べると数倍もの金額になることも珍しくない |
傷害慰謝料の相場
傷害慰謝料は、治療期間の長短により金額が大きく左右されます。
たとえば弁護士基準における通院のみの傷害慰謝料であれば、1ヶ月で28万円、3ヶ月で73万円、6ヶ月で116万円程度が目安となります。
入院を伴う場合はさらに高額になり、入院1ヶ月+通院3ヶ月なら115万円程度が相場といえます。
一方、自賠責基準では同じ通院3ヶ月(実通院日数30日と仮定する)の場合、30日×2×4,300円=258,000円となり、弁護士基準と50万円近くも差が生じます。
後遺障害慰謝料の相場
治療を続けても症状が改善せず、将来にわたって残存する障害は一般に「後遺症」と呼ばれます。そのうちの、一定の手続きを経て労働能力の低下が認められた状態を「後遺障害」といいます。この後遺障害が認定されると、傷害慰謝料に加えて後遺障害慰謝料が支払われます。
※後遺障害の認定には厳格な基準があり、適切な医学的証明が欠かせない。
後遺障害は症状の重篤度に応じて1級から14級まで等級分けされており、等級が上がるほど(低い番号ほど)慰謝料額も高額になります。
等級のうちよく認定されるのが「むち打ち症」に基づく14級で、もっとも軽い等級でもあります。
後遺障害慰謝料の相場は、自賠責基準だと32万円ですが弁護士基準だと110万円程度にまで大きくなります。
なお、慰謝料に加えて逸失利益も支払われることもあるため、総額にして数百万円の補償となることもあります。
そのほかの等級を弁護士基準で算定したときの相場は、12級で290万円、9級で690万円、7級で1,000万円、5級で1,400万円、3級で1,990万円、1級で2,800万円です。
死亡慰謝料の相場
交通事故で被害者が亡くなってしまった場合、その本人に対する慰謝料と遺族の慰謝料の2つが発生します。
この死亡慰謝料は、弁護士基準だと被害者の立場によって金額が区分されています。
- 一家の支柱の場合は2,800万円
- 母親・配偶者の場合は2,500万円
- その他の場合は2,000万円~2,500万円
これが本人分の慰謝料の目安です。
これに加えて、遺族の人数や関係性に応じて遺族固有の慰謝料が加算されることもありますので、死亡事故の場合は慰謝料で総額3,000万円を超えることも十分起こり得ます。
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