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調停離婚の流れ~手続の内容や重要なポイント・注意点とは~

夫婦の話し合いで解決できない離婚問題については調停で話し合うことになります。調停は裁判所を使った協議の手続であり、揉めているときでも調停により解決されるケースは多いです。

当事者としてはまず「調停とは何か」を理解しておくことが大切で、その上で「どんな手続が必要になるのか」「有利に調停を進めるためのポイントや注意点」を知っておくと良いでしょう。これらを当記事でまとめています。

離婚調停の概要と手続全体の流れ

そもそも「調停」とは、調停委員を間に挟んで和解を図る裁判所の手続のことです。訴訟とは異なり、裁判官が強制的に答えを出すわけではありません。あくまで当事者の意見を揃えて和解することを目標とした手続です。

 

調停の仕組みは様々なシーンで使われており、離婚について揉めているときに「離婚調停」を利用することになります。

※調停によって離婚をしたときは特に「調停離婚」と呼ばれる。

 

なお、夫婦間で話し合って一つの答えが出せるのであれば調停を利用する必要はありません。

※夫婦の話し合いだけで離婚をしたときは特に「協議離婚」と呼ばれる。

 

そこで離婚までの流れをまとめると次のように整理できます。

 

  1. まずは夫婦で話し合って協議離婚を目指す
  2. 協議離婚ができないときは調停離婚を目指すため、申立書などの必要書類を準備する
  3. 家庭裁判所に必要書類一式を提出して調停を申し立てる
  4. 定められた調停期日で調停委員に意見を伝える
  5. 離婚をするかどうか、離婚に際しての条件などのすり合わせができれば調停は成立
  6. 離婚届を提出

 

なお、調停が成立しなかった場合は裁判に移行する必要があります。いつまでも意見が合わないときは、裁判官の判断に基づき判決で結論が出されます。

調停離婚の進め方

調停は裁判所の手続ですので、まずは提出書類の準備が必要です。そして申し立てをし、調停期日にて交渉を進めていくことになります。

申立書や添付書類の作成と取得

申立書は必須です。裁判所で取得、あるいはダウンロードして作成をしておきましょう。配偶者に対しても送付する必要がありますので、裁判所に提出する分に加え、もう1部作成しておきます。

 

他にこちらの書類も用意します。

 

  • 連絡先等の届出書
  • 戸籍謄本(夫婦の全部事項証明書)
  • 進行に関する照会回答書(調停期日に相手方に会いたくない理由などもあれば記載する)
  • 事情説明書(未成年者がいるときに作成する)

家庭裁判所への申立て

必要書類の準備ができれば、「配偶者の住所地」が管轄である家庭裁判所に対して提出し、申立てをします。

 

他のエリアの家庭裁判所、あるいは配偶者の住所地にある地方裁判所に提出しないよう注意しましょう。

 

また、申立てをするときは手数料として収入印紙1,200円分の支払いが必要です。郵便切手代も求められますので、その金額を支払いましょう(金額は要確認)。

調停期日における話し合い(複数回)

申立てが認められると、裁判所から連絡がやってきます。裁判所とのやり取りを通じて調停期日の日程を調整していきます。

 

調停期日では配偶者と直接会う必要はありません。特にDV被害を受けていた方などは直接の話し合いが困難です。こうした事情にも配慮した、柔軟性の高い交渉の場が設けられます。

 

また、通常調停期日は複数回実施されます。しばらく期間が必要であることは理解し、計画的に取り組むようにしましょう。

1回の期日の所要時間は2時間程度が目安。

調停の成立と離婚届の提出

双方の意見を揃えることができれば調停は成立です。

 

その後「離婚届」を提出して離婚をした事実を戸籍に載せます。期限は「調停成立の日から10日以内」です。市区町村役場にて手続を行いましょう。

離婚調停のポイント

離婚調停を少しでも有利に進めるため、スムーズに進めるためには、次のポイントを押さえて取り組むことが大事です。

 

証拠に基づいて主張する

証拠の存在がもっとも重要。必要な証拠は主張内容により異なる。仮に配偶者の浮気を理由に離婚をしたいのであれば、不貞行為があったという証拠を持つと有利に進められる。

どんな証拠を集めるべきか弁護士からアドバイスを受け、調査が必要な事柄に関しては探偵なども利用すると良い。

冷静に調停委員とコミュニケーションを取る

感情的に訴えかけても解決はできない。何があったのか、何を求めるのか、なぜ求めるのか、相手方との関係、相手方の状況などを落ち着いて一つひとつ伝えていく。

調停委員や弁護士の意見を参考にする

理想の結果だけを求めても実現ができない可能性がある。法律のプロである調停委員や弁護士にも相談して、妥協せざるを得ない点とそうでない点を見分けることが大事。積極的にアドバイスを求めて参考にした方が良い結果は得やすい。

法改正について

調停に限らず法律上の制度は改正されることがある。便利な制度、当事者の事情に配慮した制度が新設されることもあるため、知識のアップデートがされていないときは最新情報にも触れておく。

2024年にはDV被害者向けに制度が整備され、Web会議システムを使った効率的な運用も開始される。

 子どもがいるときの注意点

夫婦の間に子どもがいるときは考えるべきことが増えます。夫婦各々のことだけを考えるのではなく、子どもの成長にも配慮した形で結論を導き出すべきです。

 

また、親としては「親権」の獲得も重大な問題です。統計上は約94%もの高い割合で母親が親権を取得していますが(出典:令和3年司法統計年報)、母親であれば無条件に有利になるわけではないことに注意しましょう。重要なのは「子育ての実績」ですので、親権を獲得したい親としては次の点を立証できるよう備えるべきです。

 

  • 子どものお世話を自分主体で行ってきたこと
    ※保育園等の連絡帳など、記録が残っているものを準備しておく
  • 子どもとより長く一緒に暮らしていること
    ※子どもと別居していると不利になる
  • 子ども自身が自分と一緒に暮らしたいと言っていること
    ※子どもの年齢が幼い場合はあまり考慮されない
  • 経済力があり子どもを養うことができること
    ※養育費の支払いにより解決できる問題でもあるため、必須ではない
  • 離婚原因が相手方にある
    ※子どもの利益を第一に評価するため、DVなどとは異なる子どもへの影響がない原因であればあまり考慮されない

 

その他、養育費(金額、支払い方法など)や面会交流(実施頻度、交流方法など)についても子どもがいるときは話し合う必要があります。部分的に夫婦間の同意が取れているときはすべてを離婚調停で協議する必要はなく、意見が揃っていない部分に関してのみ調停で話し合うことになります。

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榎本 清Kiyoshi Enomoto / 埼玉弁護士会

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