離婚の4つの種類を解説 ~協議離婚・調停離婚・審判離婚・裁判離婚について~
離婚を成立させる手続は4種類あります。
メジャーなものとして「協議離婚」と「調停離婚」の2つが、比較的レアなケースとして「審判離婚」や「裁判離婚」の2つが挙げられます。
それぞれどのような特徴を持つのか、どの方法で離婚をすることになるのか、離婚のやり方をよくわかっていないという方に向けてここで簡単に解説していきます。
協議離婚について
「協議離婚」とは、その名の通り“夫婦間の話し合い”により意思決定をする離婚を指します。
当事者での話し合いが軸になるのですが、ポイントは“双方による合意”の存在です。
ただ話し合えば良いのではなく、当事者間の話し合いだけで双方が納得することができれば協議離婚を成立させられます。
協議離婚の場合、第三者を介在させる必要がなく協議自体を行うのに手続は不要ですし、費用もかかりません。
しかしながら法的な知識を持たない当事者だけで協議を済ませてしまうと、後になって権利義務関係でトラブルが発生するリスクも高まります。
なお、その話し合いの中で合意が得られたからといって即座に離婚が成立するわけではありません。
個人間のやり取りで成立させられる契約一般とは異なり、婚姻関係の有無は法的な手続を求めています。
そこで離婚をする場合には「離婚届」を作成し、市区町村役場でこれを提出しなければなりません。
ここまで進めてようやく協議離婚は成立します。
多くの離婚は、この協議離婚で成立しています。
厚生労働省が令和4年に公表したデータでも「9割弱は協議離婚で成立している」と示されています。
離婚協議書の作成がポイント
協議離婚では、他の離婚方法に比べて、権利義務関係についてトラブルが起こるリスクが大きいです。
このことは、法的な知識が十分でない当事者だけで協議を完結させてしまうことと口約束で済ましてしまうことに由来します。
そこでできるだけトラブルをなくすためにも、少なくとも「離婚協議書」を作成しておくことが望ましいです。
書面で離婚に際しての約束事を取りまとめていれば、後になって「そんなことは言っていない」などと主張させるのを防ぐことができます。
口約束だけで済ませてしまうと、慰謝料の請求が満足にできなかったり、十分な養育費が請求できなかったりする危険が生じます。
そこで次のような事項につききちんと話し合いができているかどうか、書面に記載できているかどうか、確認しながら作成を進めていきましょう。
- 慰謝料の有無と金額等
- 養育費の有無と金額等
- 親権者の指定
- 面会交流の方法等
- 財産分与の方法・内容
- 婚姻費用の清算
- 年金分割
- 離婚後の氏
また離婚協議書を作成するときは、弁護士に依頼すること、公正証書として作成することがおすすめされます。
弁護士に依頼することで、証拠として有効な書面を作成しやすくなりますし、当事者間の揉め事も防ぎやすくなります。
そして公正証書として作成すれば、書面の紛失や改ざんなどのリスクをなくすことができます。
調停離婚について
夫婦間の話し合いだけでは解決できないこともあります。このように協議離婚の成立が難しいケースでは、「調停離婚」に進みます。
調停離婚では、調停委員が間に入り、双方の意見を整理しながら話を進めていきます。
結局のところ当事者間の合意が必要となりますし、当事者間の協議が軸となりますが、調停委員という第三者が入ることにより解決もしやすくなります。
無理な要求をしていることに気が付くことができますし、その要求内容は裁判でも認めてもらえる可能性が低いといった気づきも得ることができるでしょう。
なお調停にかかる期間は事案によりまちまちですが、おおよそ3ヶ月から半年ほど要するケースが多いようです。
協議離婚よりも長くなる傾向にありますが、後述の裁判離婚よりは短い期間で解決しやすいといわれています。
調停委員への主張・説明がポイント
調停離婚の場合、調停委員に自身の主張を上手く伝えることが大切です。
調停委員が裁判における裁判官のように結論を下すわけではありませんが、多少調停を有利に進めやすくなることも考えられるからです。
例えば調停委員による提案内容などを自身の主張に寄った内容にするといったことが期待できるかもしれません。
上手く、説得的に説明するには、弁護士のアドバイスを参考にすると良いです。調停手続自体は弁護士がついていなくても進められますが、弁護士を味方に付けておくと有利に事を進めやすくなりますので、依頼しておくことをおすすめします。
審判離婚について
調停で離婚を成立させられなかった場合、調停に代わる審判を裁判所が下すことがあります。
ただし実際のところ審判離婚で終結するのはレアケースと思われます。
審判であっても2週間以内に当事者が異議を申し立ててその効力を失わせることができてしまいますし、そうなると結局裁判で決着を付けるしかなくなります。
実際、離婚件数全体のうち審判離婚の件数は0.1%にも満たないといわれています。
裁判離婚について
調停離婚が成立しない場合、最終的に裁判が開かれます。
裁判では、当事者が離婚をする旨、離婚を求めることの根拠などを法令に則った形で主張しなければなりません。
協議離婚や調停離婚のように、比較的自由な形式で協議を進めることはできません。
何より最終判断の決定権は裁判官にあります。ここまでくると当事者が拒絶の意思を示しても結果を覆すことはできません。
提出した資料をもとに、法的に正しいと思われる結論を裁判官が提示します。
より厳格な手続となりますので、判決が出るまでの期間も比較的長くなります。1年を超えることも十分に考えられます。
そして、最終判断を裁判官が出すとはいえ、一切の異議申し立てができないわけではありません。
「控訴」「上告」といった上訴により、別の裁判所で再度審理を受けるという選択肢も残されているからです。
そして上訴をされてしまうと、さらに争いは長期化してしまい、2年以上離婚を確定させられなくなることもあります。
なお、裁判が始まったとしても当事者の合意に基づく離婚ができなくなるわけではありません。「離婚をしたくない」と主張していた一方当事者が、「離婚を受け入れる」との意向を示せば、それ以上争う必要はありませんし、離婚を成立させることは可能です。
法定の離婚事由の有無がポイント
裁判離婚で離婚を成立させるには、法定の離婚事由が存在していることが求められます。
この法定の離婚事由とは、民法に規定されている次の事柄のことです。
夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
なお、第1号の不貞な行為とは不倫をしたことを、第2号の悪意の遺棄とは家から追い出したり生活費を入れなかったりといった行為を意味します。
裁判離婚で離婚を求める方は、これら5つのいずれかに該当していることを、証拠により示さなくてはなりません。
しかも、第1~5号までのどれかにあてはまれば絶対に裁判離婚ができると確定されるわけではありません。
上の条文に続く第2項には、「離婚事由がある場合でも、婚姻の継続が相当と認めるときには離婚の請求を棄却できる」とも規定されています。
訴えを起こす側も起こされる側も、自分1人で対応するのは難しくなってくるでしょう。
ご自身の求める結果を得るためには専門的な技術や経験が必要となってきますので、弁護士に依頼して裁判に取り組むようにしましょう。
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