遺言書作成の流れ~種類の選び方や書き方、保管の方法について~
自分の財産を誰にどう渡すか、相続に関して法的拘束力を持たせるには遺言書の作成が有効な手段となります。しかし、いざ取りかかると「何を準備すればいいか」「どう作ればいいか」がわからず先延ばしにしてしまう方もいるのではないでしょうか。
そんな方に向けて、遺言書作成の検討から、書き方・手続き・保管に至るまで一連の流れを解説します。
作成前の検討事項(遺言内容や遺言書選び)
最初にすべきは、「誰に、何を、どの程度で渡したいか」という遺言内容を整理することです。
自分が持つ財産(不動産、預貯金、有価証券など)の全容を書き出し、受取人ごとの配分を決めていきます。ここでは、遺留分(一定の相続人に法律上保障される取り分)の問題も念頭に置きながら内容を検討することが大切です。
法律が認める遺言の方式は複数ありますが、一般的に利用されるのは「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類です。
比較項目 | 自筆証書遺言 | 公正証書遺言 |
|---|---|---|
作成方法 | 本人が本文全文を自書する | 公証人に作成してもらう |
費用 | ほぼかからない | 財産額に応じた手数料が必要 |
第三者の関与 | 不要(自分だけで作れる) | 公証人と証人2人が必要 |
無効のリスク | 形式不備で無効になる可能性あり | 不備による無効のリスクが低い |
原本の保管 | 自己管理または法務局で保管 | 公証役場が原本を保管 |
検認 | 相続開始後、原則として必要 ※法務局保管の場合は不要 | 不要 |
どちらを選ぶか、費用や手間も踏まえて選択すると良いでしょう。なお、いずれを選んでも遺言内容そのものの効力に差が生じることはありません。
自筆証書遺言の作り方
自筆証書遺言は遺言者が一人で作成できる手軽な形式ですが、法律上の要件を満たさなければ無効になってしまいます。
次の4つを満たす形で作成しましょう。
遺言の全文を自書すること
日付を自書すること
氏名を自書すること
押印すること
※財産目録の部分に限り、パソコンでの作成や、通帳・登記事項証明書のコピーの添付が認められる。ただしその場合も目録の各ページに署名・押印が必要。
押さえておきたいポイント
日付の書き方と内容の具体性にご注意ください。
日付は「○年○月○日」など特定できる形で記載する必要があり、「令和○年○月吉日」のような記載では無効となります。
また、遺産の内容をあいまいに記載してしまうと、解釈をめぐって争いになるおそれがあります。不動産であれば登記事項証明書の表記に沿って地番・家屋番号まで正しく記載。預貯金であれば銀行名・支店名・口座番号まで特定して記載することが重要です。
なお、法務局への保管制度(後述)を利用する場合は、別途次の要件も満たす必要があります。
A4サイズを使う
余白を設ける(左20mm以上、右5mm以上、上5mm以上、下10mm以上)
ホチキス止めはしない
公正証書遺言の作り方
公正証書遺言は、法律の専門職である公証人が遺言者の意思を確認しながら作成する遺言書です。
作成に時間と手数料がかかりますが、形式的なミスが原因で無効になるリスクを大きく下げられます。原本も公証役場で保管されるため、紛失・改ざんの心配もなくなるでしょう。
公証役場での手続き
作成にあたって公証役場へ連絡し、遺言の相談・依頼を行います。弁護士等の士業者を介する方法のほか、直接公証役場に電話やメールで問い合わせることも可能です。
その後の流れは以下のとおりです。
遺言内容のメモおよび必要書類を公証人に提出する
公証人が遺言書案を作り、遺言者に提示
遺言公正証書を作成する日時を決め、公証役場に出向く
※病気等の場合は公証人へ出張依頼も可能。当日、証人2名の立会いのもと、遺言者が遺言の趣旨を公証人に口頭で述べる
公証人が内容を読み聞かせまたは閲覧させ、遺言者・証人2名が署名・押印したうえで、公証人が署名・押印して完成
1人で作成する場合と違い、思い立って即座に作れるものではありません。公正証書遺言を作りたい場合は余裕をもって準備を始めましょう。
※公証役場に提出する書類の例 |
|---|
・遺言者本人の印鑑登録証明書、または運転免許証・マイナンバーカードなどの顔写真付き公的証明書 ・遺言者と相続人の続柄がわかる戸籍謄本等 ・(相続人以外へ遺贈するとき)受遺者の住所が確認できる書類 ・(不動産を記載するとき)登記事項証明書、固定資産評価証明書など ・(預貯金を記載するとき)銀行名、支店名、口座番号が確認できるもの |
作成後の保管方法も要検討
遺言書については、死後確実に発見されるようにしつつ、紛失や改ざんなどの危険からも守れるような保管方法も考えなくてはなりません。
この点、公正証書遺言は原本が公証役場で保管されるため心配はないでしょう。
一方で、自筆証書遺言の保管は遺言者自身で慎重に検討する必要があります。自宅での保管、貸金庫での保管など方法はいくつか考えられますが、「法務局での保管」も視野に検討することが推奨されます。
※法務局での保管について |
|---|
・自筆証書遺言に限り保管してもらえる制度がある ・費用は1通3,900円 ・遺言者本人が出向いて申請(郵送や代理での申請は不可とされている)。 ・預ける際に形式面についてはチェックを受けられる(遺言内容の有効性についてのアドバイスは受けられない) |
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